会計・税務

配当 vs 役員報酬——中小企業オーナーの税務最適化戦略

中小企業オーナーが個人所得を確保する手段として、配当と役員報酬どちらを選ぶべきか。税務最適化の判断基準。

執筆: Founder's Money 編集部 · 3 分で読了 ·

中小企業のオーナー経営者は、個人所得を法人から得る手段として役員報酬配当を使い分けられる。両者は税務上の扱いが大きく異なるため、最適な配分が節税の鍵。本稿では判断基準を整理する。

役員報酬と配当の税務的違い

項目 役員報酬 配当
法人段階の損金算入 ○ 全額(定期同額給与等の要件) × 損金不算入
個人段階の所得区分 給与所得 配当所得
所得税率 累進(5〜45%) 分離20.315% or 総合課税
社会保険料 ○ 発生(個人+法人で約30%) × 発生なし
給与所得控除 ○ 適用 × なし
住民税 10%(累進部分) 5%(分離課税の場合)

配当の課税方式

分離課税(申告分離・源泉分離)

配当に対し一律20.315%(所得税15.315%+住民税5%)で課税。総合課税より有利な場合が多い。

総合課税

給与所得・他の所得と合算し累進課税。配当控除(税額控除10%)が使える。

配当控除の効果

総合課税を選択した場合、配当所得の10%(課税所得1,000万円超は5%)が税額控除される。

つまり中所得層(課税所得330〜695万円・税率20%)では、総合課税+配当控除で実質税負担が下がる場合がある。

所得帯別の最適選択

個人課税所得 役員報酬の限界税率 配当(分離課税) 配当(総合課税+控除) 最適
195万円以下 15%(住民税込) 20.315% 5% 総合課税配当
330〜695万円 30% 20.315% 20% 分離課税配当 or 総合配当
695〜900万円 33% 20.315% 23% 分離課税配当
900〜1,800万円 43% 20.315% 33% 分離課税配当
1,800万円超 50〜55% 20.315% 40%超 分離課税配当

法人段階の影響

役員報酬は法人税の損金になる(法人税が減る)。一方、配当は法人税で課税された後の利益から支払うため「二重課税」気味。

法人税率

中小企業の実効税率: 約23.2%(所得800万円以下)〜33.6%(所得800万円超)

総合的な税負担の試算

例: 法人の利益(役員報酬控除前)1,000万円、オーナー1名のケース

パターン1: すべて役員報酬

項目 金額
役員報酬 1,000万円
個人所得税・住民税 約170万円
個人社会保険料 約140万円
法人税 0円
合計税負担 310万円
個人手取り 690万円

パターン2: 役員報酬500万円+配当500万円

項目 金額
役員報酬 500万円
配当原資(税前) 500万円
法人税(配当原資分) 約115万円
配当(法人税後) 385万円
個人所得税・住民税 約30万円(役員報酬分)+ 78万円(配当分離20%)
個人社会保険料 約75万円
合計税負担 298万円
個人手取り 702万円

このケースでは配当併用がわずかに有利(手取り12万円増)。

配当の手続要件

1. 株主総会決議

配当は株主総会決議が必要。中間配当は取締役会で決議可能(定款で定めた場合)。

2. 利益剰余金の存在

配当には利益剰余金(または資本剰余金)が必要。赤字法人は配当不可。

3. 純資産規制

配当後の純資産が300万円を下回る場合、配当不可。

配当の支払時期

多くの中小企業は決算後の定期株主総会で配当決議。年1回が一般的だが、四半期配当・中間配当も可能。

役員報酬の制約

役員報酬は「定期同額給与」「事前確定届出給与」等の要件を満たさないと損金算入されない。配当は損金不算入だが、決算時の株主総会で柔軟に決定できる。

家族への分散

配偶者・子供に株式を分散することで、配当を分散できる。各自の所得税率が低く、世帯全体の税負担が下がる。

注意点

  • 株式譲渡 or 贈与の手続が必要
  • 贈与税の発生(年間110万円以下は非課税)
  • 事業承継の準備にもなる

社会保険料の影響

役員報酬には社会保険料(健康保険・厚生年金)が発生し、個人+法人で報酬の約30%。配当には社会保険料がない。

役員報酬の「社会保険料を含めた実質税負担」を計算すると、配当の方が有利になる帯が広がる。

クラウド会計でのシミュレーション

マネーフォワード クラウド会計等は役員報酬の税務シミュレーション機能あり。期初の役員報酬決定前に、配当併用も含めた最適配分を検討できる。

事業承継時の配慮

内部留保が多い会社は株価評価が高くなり、事業承継・相続時の税負担が増える。配当で内部留保を圧縮することは、長期的な承継対策にもなる。

配当の落とし穴

1. 安易な配当は資金繰り悪化

利益が出ていても、現金が手元になければ配当不可。キャッシュフロー確認後に配当決議。

2. 配当政策の継続性

毎年配当する会社が突然停止すると、株主・取引先・銀行の不安要因。配当方針を明確に。

3. 役員賞与との混同

役員賞与は事前確定届出給与でない限り損金不算入。配当とは別物。

専門家相談

配当 vs 役員報酬の最適配分は、個別事情(家族構成・所得・将来計画)で大きく変動する。税理士紹介エージェントで経営者向けの税務に強い税理士を探せる。

よくある質問

Q. 配当を初めて出す場合、どれくらいから始めるべきですか?

A. 利益剰余金の10〜20%程度から始めるのが一般的。少額から開始し、税務シミュレーションで効果を確認します。

Q. 配当の決議は決算からどれくらい遅れて可能ですか?

A. 決算から3ヶ月以内の定期株主総会で決議するのが標準。中間配当は取締役会で決議可能(定款の定めによる)。

配当 vs 役員報酬の最適化は、所得帯・社会保険料・法人税のバランスで決まる。税理士のシミュレーションを使って自社の最適点を見極めることで、年間数十万〜数百万円の節税が実現できる。

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