会計・税務
法人事業税の基本——中小企業の地方税負担と外形標準課税
法人事業税の計算方法・税率・外形標準課税の対象。中小企業が知っておくべき地方税負担の基本。
法人事業税は法人税・地方法人税と並ぶ法人の主要税金の一つ。地方税(都道府県税)で、中小企業も毎年負担する。本稿では計算方法と最新の税率を整理する。
法人事業税とは
都道府県が法人に課す事業に対する税金。所得割・付加価値割・資本割の3区分があるが、中小企業は所得割のみ。
所得割の税率(中小企業)
資本金1億円以下の中小企業の場合、所得金額に応じた累進税率:
| 所得金額 | 標準税率 |
|---|---|
| 400万円以下 | 3.5% |
| 400万〜800万円 | 5.3% |
| 800万円超 | 7.0% |
大企業向け外形標準課税
資本金1億円超の大企業は「外形標準課税」が適用される:
- 所得割: 1.0%
- 付加価値割: 1.2%(報酬給与・支払利子・支払家賃等)
- 資本割: 0.5%(資本金等)
赤字でも付加価値割・資本割が発生するため、業績悪化時の税負担が大きい。中小企業はこれの対象外。
計算例(中小企業)
例: 所得900万円の中小企業
| 所得階層 | 金額 | 税率 | 税額 |
|---|---|---|---|
| 400万円以下 | 400万円 | 3.5% | 14万円 |
| 400〜800万円 | 400万円 | 5.3% | 21.2万円 |
| 800万円超 | 100万円 | 7.0% | 7万円 |
| 合計 | 900万円 | — | 42.2万円 |
地方法人特別税(廃止)
2019年9月以前は「地方法人特別税」があったが、現在は廃止。代わりに「特別法人事業税」として再編成。
特別法人事業税
事業税の所得割税額に対し、追加税率が課税される:
- 中小企業: 事業税×37%
つまり実質的な事業税率は標準税率の1.37倍。
実効事業税率
中小企業の事業税(特別法人事業税込)の実効税率:
| 所得階層 | 事業税率 | 特別事業税 | 実効税率 |
|---|---|---|---|
| 400万円以下 | 3.5% | +1.30% | 4.80% |
| 400〜800万円 | 5.3% | +1.96% | 7.26% |
| 800万円超 | 7.0% | +2.59% | 9.59% |
所得金額の計算
法人事業税の所得は、法人税の課税所得とほぼ同じ。ただし以下の違いあり:
- 法人税は損金不算入だが事業税は計上
- 受取配当等の益金不算入は同じ
- 欠損金繰越は同じ(10年)
法人事業税の損金算入
事業税は支払時に損金算入。法人税申告書の別表4で調整。
申告事業税は当期の損金にならず、納付時の翌期の損金。
赤字法人の事業税
所得割は所得がある場合のみ課税。赤字法人は事業税ゼロ(中小企業の場合)。
ただし均等割(法人住民税)は赤字でも年7万円〜が発生する。
事業税の申告・納付
申告期限
事業年度終了の翌日から2ヶ月以内(法人税と同じ)
納付方法
- e-Tax(電子申告)
- 金融機関窓口
- 都道府県税事務所窓口
2026年税制改正の動向
2026年現在、中小企業向けの法人事業税率は安定。ただし以下が議論中:
- 外形標準課税の中小企業への拡大(現状は1億円超のみ)
- 地方創生税制の特例
- カーボンニュートラル関連の優遇
都道府県別の事業税の差
標準税率は全国共通だが、超過課税(東京都・大阪府等)もある。
| 都道府県 | 事業税の特徴 |
|---|---|
| 東京都 | 超過課税(若干高め) |
| 大阪府 | 標準税率 |
| その他 | 地域により標準 or 超過 |
地方法人税
事業税と別に、法人税の課税所得を基にした「地方法人税」もある:
- 税率: 法人税の10.3%
- 国税として徴収後、地方に配分
クラウド会計での税額予測
マネーフォワード クラウド会計等は法人税・事業税・住民税の自動計算機能あり。期中に税負担を予測し、節税対策を検討できる。
事業税の節税
1. 役員報酬の最適化
所得を圧縮して累進税率を下げる。
2. 中小企業特例の活用
設備投資の即時償却・税額控除で所得を減らす。
3. 倒産防止共済
掛金全額損金算入で所得圧縮。
4. 役員退職金規程
将来の退職金準備で計画的に節税。
赤字繰越の活用
法人事業税も法人税と同じく欠損金繰越が10年間可能。赤字期の損失を黒字期で相殺できる。
合併・分割時の留意
事業税の納税は法人単位。合併・分割時には旧法人・新法人の事業税負担を再計算。
都道府県をまたぐ事業
複数都道府県に事業所を持つ場合、事業税の税額を都道府県別に按分する必要がある。「分割基準」(従業員数・事務所数等)で按分。
専門家相談
多拠点事業・複雑な所得構造の場合、税理士相談が必須。税理士紹介エージェントで地方税に詳しい税理士を探せる。
事業税の支払資金確保
決算後2ヶ月以内に納付するため、決算月の翌々月までに資金を確保。融資代行プロで納税資金の融資相談ができる。
事業税と消費税の違い
| 項目 | 事業税 | 消費税 |
|---|---|---|
| 課税主体 | 都道府県 | 国 |
| 課税基準 | 所得 | 取引 |
| 申告期限 | 2ヶ月以内 | 2ヶ月以内 |
| 赤字時の負担 | 所得割は不要 | 不要(免税) |
よくある質問
Q. 個人事業主にも事業税はかかりますか?
A. はい、個人事業税が課税されます。所得290万円超で5%程度(業種により異なる)。法人事業税より低めの税率。
Q. 法人事業税はいつ計上すべきですか?
A. 法人事業税は支払時の損金。決算では「未払事業税」として計上、納付時に「未払事業税」を取り崩します。
法人事業税は中小企業にとって決して小さくない税金。累進税率の理解+節税対策の積み重ねで、年間数十万円の節税が可能。クラウド会計で期中に税負担を可視化することが第一歩だ。