会計・税務
法人税申告書の作成フロー——期限・必要書類・税務調査リスク
法人税申告書の作成フロー全体像と必要書類・期限を整理。税務調査が入りやすい類型も解説。
法人化すると毎年必須となるのが法人税申告書の作成・提出。個人の確定申告と異なり、法人税・地方法人税・消費税・地方税など複数の申告書を作成する必要がある。本稿で全体像と注意点を整理する。
法人税申告書の全体像
必要な申告書類
- 法人税申告書(別表1〜)
- 地方法人税申告書
- 消費税申告書(課税事業者の場合)
- 都道府県民税・事業税申告書
- 市町村民税申告書
- 添付書類: 決算書(B/S・P/L・株主資本等変動計算書)、勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書
申告書作成の年間スケジュール
| 時期 | 作業 |
|---|---|
| 事業年度終了月(例: 3月) | 決算棚卸・売掛買掛金確定 |
| 翌月(4月) | 決算修正・試算表確定 |
| 2ヶ月以内(5月) | 法人税申告書提出・納税 |
| 申告期限延長申請があれば | 3ヶ月以内(6月)に提出可能 |
申告期限
原則
事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内。3月決算なら5月末まで。
申告期限延長
定款で定めれば1ヶ月の延長申請が可能(株主総会の都合等)。3ヶ月以内に短縮されることも。
納税期限
申告期限と同じ。納税が遅れると延滞税(年8.7%相当)が発生。
申告書作成の主要ステップ
ステップ1: 月次仕訳の確定
毎月のクラウド会計ソフトでの仕訳が前提。事業年度終了時点で仕訳の遺漏がないか確認。
ステップ2: 棚卸資産の評価
事業年度末日の在庫を実地棚卸で確認。評価方法(先入先出法・平均法など)に従って金額確定。
ステップ3: 売掛金・買掛金の確定
取引先ごとの残高を確認。長期未回収の売掛金は貸倒引当金の計上を検討。
ステップ4: 減価償却の計算
固定資産の減価償却費を計算。新規取得分は中小企業特例(30万円未満一括償却等)を活用。
ステップ5: 役員報酬の確認
定期同額給与の要件を満たしているか。事前確定届出給与の届出済みか。
ステップ6: 決算書の作成
B/S・P/L・株主資本等変動計算書を確定。
ステップ7: 法人税申告書の作成
別表1〜18のうち該当するものを作成。会計上の利益から税務上の所得への調整(別表4・5)が中心作業。
ステップ8: 消費税申告書の作成
課税売上・課税仕入を集計し、納付すべき消費税を計算。
ステップ9: 地方税申告書の作成
都道府県・市町村ごとの税額計算。
ステップ10: e-Tax で電子申告
法人税はe-Taxでの電子申告が義務化されている(資本金1億円超は2020年から、それ以外は任意)。
税理士に頼むメリット
1. 別表4・5の調整が複雑
会計上の利益と税務上の所得は異なる。減価償却超過額・交際費損金不算入・役員報酬制限など、別表4で加算減算する項目が多い。素人が独力でやるとミスしやすい。
2. 節税余地の発見
中小企業特例(設備投資・賃上げ・研究開発)・繰越欠損金・特別償却など、知っていれば節税できる制度を活用してくれる。
3. 税務調査対応
税理士の関与した申告書は、税務調査の選定基準で「リスクが低い」と評価されやすい。
独力でやる場合のリスク
会計ソフトの「申告書自動作成機能」もあるが、別表調整は機械的に判断できない部分が多い。誤った申告で過少申告加算税(10〜35%)・延滞税の対象になるリスクがある。
独力でやるなら、ゼロ税理事務所のような決算スポット税理士サービスを利用するのが現実的。年1回の決算だけ任せれば、リスクを大きく減らせる。
税務調査の対象になりやすい類型
1. 売上規模が急拡大した法人
3年以内に売上が3倍以上になっている場合、調査対象になりやすい。
2. 同業他社と比べて利益率が低すぎる
業種平均利益率と大きく乖離していると、経費の付け方を疑われる。
3. 役員報酬が極端
役員報酬が突然変わる、家族役員の報酬が業務実態と乖離している場合。
4. 海外取引・現金取引が多い
海外取引・現金取引は不正の温床になりやすく、調査対象になりやすい。
5. 設立5年以内・10年経過
設立5年目で初回調査が入ることが多い。10年経過で再調査の対象になりやすい。
申告書作成のために整備すべきもの
- クラウド会計ソフト(マネーフォワード等)で月次仕訳完了
- 領収書・請求書の電子保存(電子帳簿保存法対応)
- 勘定科目内訳明細書のテンプレート
- 固定資産台帳
- 議事録(取締役会・株主総会)
よくある質問
Q. 赤字の場合は申告不要ですか?
A. 赤字でも申告は必要です。赤字を翌期以降に繰越控除するためには、毎期の確定申告が前提。
Q. 法人住民税は赤字でも納税が必要ですか?
A. はい、法人住民税の均等割(年7万円〜)は赤字でも納税義務があります。
法人税申告書作成は「会計知識」「税務知識」「業界の節税ノウハウ」の3つが必要。1人でやるか税理士に任せるかは、年間の税効果と工数で判断したい。