会計・税務
インボイス制度と適格請求書の保存——電子帳簿保存法対応
インボイス制度の請求書保存方法と電子帳簿保存法の関連を整理。電子保存・紙保存どちらを選ぶべきかを解説。
2023年10月のインボイス制度開始と、2024年1月の電子帳簿保存法改正で、請求書の保存方法が大きく変わった。電子取引は電子で保存が必須となり、紙の保存も従来通り認められる。本稿では何をどう保存すべきかを整理する。
インボイス制度における請求書保存の基本
適格請求書(インボイス)は、買い手が仕入税額控除を受けるための証憑。発行する側・受け取る側の両方で保存義務がある。
発行側
発行した適格請求書の写し(電子データまたは紙)を7年間保存。
受領側
受領した適格請求書を7年間保存。仕入税額控除の根拠書類となる。
電子帳簿保存法の3つの保存区分
1. 電子帳簿等保存
会計ソフトで作成した帳簿・決算書類を、そのまま電子で保存する。任意。
2. スキャナ保存
紙で受領した請求書・領収書をスキャナ(スマホ撮影含む)で電子化して保存する。任意。
3. 電子取引データ保存
電子的にやり取りした請求書・領収書(PDF・メール添付・クラウド明細など)を電子のまま保存する。2024年1月から義務化。
2024年1月以降——電子取引は電子保存必須
これまで「電子で受領した請求書を紙に印刷して保存」する運用が認められていたが、2024年1月以降は不可。電子で受領したものは電子のまま保存しなければならない。
該当するもの:
- メール添付されたPDF請求書
- クラウドサービスからダウンロードした請求書
- EDI取引(発注書・受領書の電子データ)
- クレジットカード明細(電子取引)
電子保存の要件
1. 真実性の確保
改ざん防止のため、以下のいずれかを満たす必要がある:
- タイムスタンプ付与
- 訂正・削除履歴の保存(クラウド会計ソフトの場合)
- 改ざん防止のための事務処理規程の整備
2. 可視性の確保
- パソコン・モニタ・プリンタの備え付け
- 検索機能の確保(取引先・取引日・金額で検索可能)
- データのダウンロード提示要請への対応
具体的な対応方法
方法1: クラウド会計ソフトの活用
マネーフォワード クラウド会計などは、電子取引データの保存機能を標準搭載。請求書PDFを取り込めば、検索可能な形式で保存される。
方法2: 専用の電子保存サービス
電子帳簿保存法対応のクラウドストレージサービス(Box・Dropbox Business・Google Driveなど)で、規程整備とともに運用。
方法3: 自社サーバ+規程整備
自社のNAS等にPDF保存し、改ざん防止規程を整備する。中小企業では運用負担が大きいため、クラウドサービス選択が現実的。
紙の請求書はどうする
紙で受領した請求書は、紙のまま保存可能(従来通り)。あるいは、スキャナ保存制度を活用して電子化することもできる。
ただし、スキャナ保存後の原本破棄には条件があるため、運用ルールを整備する必要がある。
個人事業主の対応
個人事業主も電子帳簿保存法の対象。電子取引のメール添付PDF請求書は、電子のまま保存が必須。
クラウド会計ソフト(マネーフォワード・freee・弥生)を使えば、自動でこの要件を満たせる。
違反時のリスク
電子帳簿保存法違反では:
- 青色申告承認の取消
- 追徴課税
- 重加算税(35%)の対象
と、税務調査で発覚した場合のリスクが大きい。
2026年1月以降の宥恕措置終了
2024年1月の電子保存義務化に対する宥恕措置(やむを得ない事情がある場合の紙保存容認)は、2026年1月以降は厳格に適用される。今のうちに電子保存体制を整えるべき。
対応のステップ
- 電子取引の洗い出し(どの取引先からPDFで請求書が来るか)
- 保存先の決定(クラウド会計 or 専用ストレージ)
- 事務処理規程の整備(改ざん防止の社内ルール)
- 検索機能の確認
- 従業員への周知・教育
規程テンプレート
国税庁が「電子取引データ保存規程」のテンプレートを公開している。これを参考に自社の運用に合わせて修正すれば、最小限の工数で規程整備が可能。
よくある質問
Q. 電子取引のメール本文だけで請求書がない場合は?
A. メール本文に取引額や支払条件が記載されていれば、メール自体が電子取引データとして保存対象になります。
Q. クレジットカード明細はどう保存しますか?
A. カード会社がWebで提供する明細PDFをダウンロードして電子保存します。クラウド会計ソフトの自動連携を使えば、明細データが直接取り込まれます。
インボイス制度+電子帳簿保存法は、対応しないとペナルティが大きい。クラウド会計ソフト導入で大半を自動化するのが、最も労力のかからない対応策だ。