会計・税務

海外取引のリバースチャージ消費税——SaaS・電子サービスの納税義務

海外SaaS・電子サービス利用時のリバースチャージ消費税の仕組み。中小企業の対応ルール。

執筆: Founder's Money 編集部 · 3 分で読了 ·

海外のSaaS・電子サービス(AWS・Google Workspace・Slack等)を利用する場合、リバースチャージ方式の消費税が発生する。本稿では中小企業向けの実務対応を整理する。

リバースチャージ方式とは

通常の消費税: サービス提供者が消費税を顧客に転嫁→提供者が納税
リバースチャージ: サービス提供者(海外)は消費税を請求しない→顧客(国内)が直接納税

これは2015年の消費税法改正で導入。海外事業者が国内事業者に提供する「電気通信利用役務(電子サービス)」が対象。

対象となる海外サービス

  • クラウドサービス(AWS・Google Cloud・Azure)
  • SaaS(Slack・Zoom・Notion等)
  • 電子書籍・音楽・動画配信(Adobe・Spotify等)
  • オンライン広告(Google Ads・Facebook Ads)
  • オンラインソフトウェア

リバースチャージの対象事業者

すべての法人ではなく、以下に該当する場合のみ:

  • 消費税の課税事業者(年売上1,000万円超 or インボイス登録)
  • かつ、課税売上割合が95%未満の事業者

免税事業者・課税売上割合95%以上の事業者は対象外(リバースチャージしない)。

課税売上割合とは

課税売上割合 = 課税売上 ÷ (課税売上 + 非課税売上)

多くの一般的な事業者は95%以上(非課税売上が少ない)。リバースチャージ対象になるのは、医療業・住宅賃貸・教育機関等の非課税売上比率が高い事業者中心。

リバースチャージの計算

対象取引額の集計

海外電子サービスの利用額を年間集計。

消費税額の計算

対象取引額 × 10% = リバースチャージ消費税額

仕入税額控除の対象

リバースチャージで納付した消費税は、仕入税額控除の対象にもなる。差引ゼロになるケースが大半。

計算例

例: 年間AWS利用料120万円(海外取引)

項目 金額
リバースチャージ対象取引 120万円
リバースチャージ消費税(10%) 12万円(納税義務)
仕入税額控除 12万円
差引 0円

多くの場合、納税と控除が相殺してゼロになる。ただし課税売上割合が低いと、控除が一部のみとなり実質負担が発生。

消費税申告書での記載

消費税申告書の「特定課税仕入れ」欄に記載。詳細は付表で計算。

請求書・領収書の取扱い

海外事業者からの請求書には「VAT/GST 0%」と記載されていることが多い。これは海外事業者は日本の消費税を請求しないため。日本の事業者がリバースチャージで納税する。

免税事業者・小規模事業者は対象外

多くの中小企業・個人事業主は:

  • 免税事業者 → リバースチャージ対象外
  • 課税売上割合95%以上 → リバースチャージ対象外

つまり、ほとんどの中小企業はリバースチャージを気にしなくてよい。

対象になりうる業種

業種 非課税売上の例
医療業 保険診療
住宅賃貸業 居住用賃貸
教育機関 授業料
金融業 利息
社会福祉 介護報酬

クラウド会計での処理

マネーフォワード クラウド会計等では、海外取引の課税区分を「特定課税仕入れ」に設定することで自動処理。手動での集計が不要。

リバースチャージの仕訳

サービス利用時

(借方) 通信費(または該当科目) 100,000  /  (貸方) 買掛金(海外) 100,000

消費税申告時(差引ゼロの場合)

(借方) 仮払消費税 10,000  /  (貸方) 仮受消費税 10,000

差引ゼロの場合、実際のキャッシュフローには影響しない。

登録国外事業者制度

海外事業者が日本で消費税を直接納税する選択肢として「登録国外事業者制度」がある。AWS・Apple等の大手は登録済み。

登録国外事業者から購入する場合、通常の消費税仕入(リバースチャージ不要)と同じ扱いになる。

2023年インボイス制度との関係

登録国外事業者の中で、適格請求書発行事業者として国税庁に登録した事業者からの仕入は、通常のインボイスと同じ扱い。

専門家相談の重要性

リバースチャージは複雑な税務知識が必要。海外取引が多い事業者は税理士紹介エージェント等で、国際税務に強い税理士の支援を受けるのが安全。

免税事業者の海外SaaS利用

免税事業者(年売上1,000万円以下)はリバースチャージ対象外。海外SaaS利用料は全額経費計上(消費税の調整不要)。

非課税事業者の取扱い

個人(事業者でない一般消費者)は対象外。電子書籍購入・Netflix購読等は、海外事業者が日本の消費税を負担する形。

業務効率化への影響

リバースチャージを意識すると、海外SaaSのコスト管理が複雑化。日本の同等サービスへの切り替えを検討する企業も。

ただし機能面で海外サービスが優れているケースが多く、コスト計算と機能を天秤にかける判断が必要。

記録すべき情報

  • 海外サービス事業者名
  • 提供国
  • サービス内容(電気通信利用役務に該当するか)
  • 支払金額(月別)
  • 登録国外事業者の有無

よくある質問

Q. 個人で利用したNetflixの料金もリバースチャージ対象ですか?

A. いいえ、個人消費者は対象外。個人事業主の事業利用も、課税売上割合が95%以上ならリバースチャージ不要です。

Q. 全部の海外SaaSがリバースチャージ対象ですか?

A. 「電気通信利用役務」に該当するサービスのみ。物販(Amazon等のアメリカからの輸入品)は別の制度(関税・輸入消費税)。

リバースチャージは多くの中小企業にとって直接的な影響は少ない。課税売上割合95%以上の一般的な事業者は対象外のため、まずは自社が対象になるか判定することが先決だ。

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