会計・税務

源泉徴収の実務——個人事業主・フリーランスへの支払時の処理

法人が個人事業主・フリーランスに支払う際の源泉徴収義務。報酬種類別の税率と、納付期限・電子納付の方法。

執筆: Founder's Money 編集部 · 3 分で読了 ·

法人が個人事業主・フリーランスに報酬を支払う場合、源泉徴収義務が発生する。源泉徴収を怠ると追徴課税の対象になるため、正しい処理が必要。本稿では実務ルールを整理する。

源泉徴収が必要な報酬

所得税法で定められた特定の報酬:

  • 原稿料・講演料・デザイン料
  • 弁護士・税理士・公認会計士等の士業報酬
  • 司法書士報酬
  • 外交員等の報酬
  • 役員賞与(個人取引でない)
  • プロスポーツ選手・モデル・芸能人の報酬
  • ホステス等の報酬

源泉徴収税率

報酬種類 税率(復興特別所得税込)
原稿料・講演料・デザイン料 10.21%(100万円超は20.42%)
士業報酬 10.21%(100万円超は20.42%)
司法書士報酬 10.21%(1万円控除後)
外交員報酬 10.21%(月額12万円控除後)

計算例(原稿料の場合)

50万円の原稿料

50万円 × 10.21% = 51,050円(源泉徴収)

支払額 = 50万円 – 51,050円 = 448,950円

150万円の原稿料(100万円超)

100万円 × 10.21% = 102,100円
50万円(超過分) × 20.42% = 102,100円
合計源泉徴収 = 204,200円

支払額 = 150万円 – 204,200円 = 1,295,800円

源泉徴収の流れ

  1. 個人事業主・フリーランスから請求書受領
  2. 源泉徴収税額を計算
  3. 支払額(=請求額 – 源泉徴収税額)を支払
  4. 源泉徴収税を翌月10日までに税務署へ納付
  5. 年末に支払調書を作成・提出

請求書の記載例

個人事業主からの請求書には以下が記載されている必要がある:

  • 報酬総額(請求金額)
  • 源泉徴収税額
  • 差引支払額

記載例

請求金額(報酬): 100,000円
源泉徴収税額: △10,210円
差引お支払金額: 89,790円

源泉徴収税の納付

納付期限

支払月の翌月10日まで(土日祝日の場合は翌営業日)

納付方法

  • e-Tax(電子納税): 推奨
  • 金融機関窓口
  • ダイレクト納付(口座引落)

納期の特例

給与支給人員10名未満の事業者は、源泉徴収税を半年に1回まとめて納付できる「納期の特例」を申請可能。

  • 1〜6月分の源泉徴収税: 7月10日まで
  • 7〜12月分の源泉徴収税: 翌年1月20日まで

事務作業が大幅に減るため、小規模事業者は申請推奨。

支払調書の作成・提出

支払調書とは

1年間に個人事業主・フリーランスに支払った報酬と源泉徴収税額をまとめた書類。

提出義務

同一人に対する年間支払が次の金額を超える場合:

  • 原稿料・講演料: 5万円超
  • 士業報酬: 5万円超
  • 外交員報酬: 50万円超

提出期限

翌年1月31日まで(税務署と支払先個人事業主の両方に送付)

源泉徴収義務の発生条件

原則すべての法人と、給与支給を行う個人事業主が源泉徴収義務者。例外:

  • 常時2人以下の家事使用人のみの個人
  • 給与の支払がない一部の特殊な個人

ほぼすべての法人・個人事業主は源泉徴収義務者。

源泉徴収を忘れた場合

追徴課税

本来の源泉徴収税額+不納付加算税(10%)+延滞税

自主的な納付

税務調査前に自主的に納付すれば、不納付加算税が5%に軽減。

遡及納付

源泉徴収を行わず支払してしまった場合、後から源泉徴収+納付。受取人から不足分を回収するか、自社で負担。

個人事業主・フリーランスからの支払催促

個人事業主・フリーランス側でも、源泉徴収された金額を確定申告で控除できるため、年末に「支払調書を発行してください」と求めることが多い。法人として対応する義務がある。

クラウド会計での処理

マネーフォワード クラウド会計等では、源泉徴収の自動計算機能あり。請求書受領時に「源泉徴収」を選択すれば、自動的に正しい税額が計算される。

源泉徴収の仕訳例

支払時(原稿料10万円)

(借方) 支払報酬 100,000  /  (貸方) 普通預金  89,790
                          / (貸方) 預り金   10,210

納付時(翌月10日)

(借方) 預り金 10,210  /  (貸方) 普通預金 10,210

消費税との関係

源泉徴収税は「報酬総額(消費税込)」に対して計算するか、「報酬本体(消費税抜)」に対して計算するか、業界慣行で異なる。

多くの場合「税込み」ベースで源泉徴収するが、契約書で明示するのが安全。

業種別の留意点

IT・SaaS

フリーランスエンジニアへの業務委託費は、報酬の「役務提供」として源泉徴収不要なケース多い(雇用契約類似でない場合)。

クリエイティブ業

デザイン料・原稿料は源泉徴収必須。明確に記載。

士業との取引

顧問料・業務委託料は源泉徴収必須。月額顧問料も対象。

外注時の契約書

個人事業主・フリーランスとの契約書に、源泉徴収条項を明記:

  • 源泉徴収する/しないの明示
  • 税率(10.21% or 20.42%)
  • 支払条件
  • 支払調書の発行

専門家相談

源泉徴収の判定が複雑な場合、税理士相談が安全。税理士紹介エージェントで、源泉徴収・納期特例に詳しい税理士を探せる。

よくある質問

Q. 海外フリーランスへの支払も源泉徴収必要ですか?

A. 原則必要(20.42%)。ただし租税条約の適用で減免される場合があります。条約適用は手続が複雑なため、税理士相談を推奨。

Q. SaaS利用料(海外)の源泉徴収は必要ですか?

A. SaaS利用料は「役務提供の対価」で源泉徴収不要なケースが多いです。ただしリバースチャージ消費税の対象になるため注意。

源泉徴収は法人・個人事業主の重要な税務義務。正しい税率計算+納期特例の活用+支払調書の整備で、税務リスクを回避しつつ事務効率を上げられる。

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